
敷地売却制度
問題をを解決するにはマンション管理組合としての意思決定後、区分所有者が納得する合意形成が必要となる。しかし、築50年も経過すると新築時の所有者は高齢となり、売却していたり賃貸に出して居住していないケースが殆どだ。住んでいる高齢者もを年齢的に変化を望まないであろうし、部屋を賃貸に出している所有者は建物への関心が薄く、意見をまとめるのは至難の業である。
老朽化したマンションの寿命は、あとどれくらいの年数が残っているのだろうか。鉄筋コンクリートのマンションの法定耐用年数は47年だが、物理的な寿命とは直接的な関係はない。しかし建替えの場合は多くが築40~50年で実施されていることを考えると、築50年前後の物件に何も手を加えずに住み続けることは無理があるようだ。となれば、敷地売却、改修、建替えの3つが選択肢となる。
敷地売却制度は建物と敷地を一括して売却する仕組みだが、行政による特定要除却認定と買受計画の認定を受けなければならない。区分所有者数と議決権に加え、敷地利用権の持ち分価格の5分の4以上の賛成がなければ成立しない。改修には共用部の変更や耐震改修等があるが、耐震性が不足しているマンションにおける耐震改修には、管理組合総会での決議が必要だ。耐震改修促進法の特例によって特別決議ではなく普通決議で実施可能だ。建替えを決定する方法は、全員合意による方法と区分所有法に定める建替え決議による方法があるが、どちらにせよ必要な同意数を得るのは簡単ではない。
築年数の経過したマンション管理組合は冒頭に述べた事情もあり、決議もスムーズに行われずに時間が掛かる。また全て形式に添わせる為、ほんの些細な件にしても委任状のやり取りやらで一向にことが進まない。責任の所在がはっきりしていないのも理由の一つだろう。うちが管理している物件(マンション一階)に飲食店を入居させるかどうかの決議にもかなりの時間を要した。前テナントも飲食店であたったのにである。
私が働く墨田区の押上・曳舟エリアにも老朽化マンションが数多く立ち並ぶ。そろそろ力尽きてしまうのではないかと思える物件も実際にある。私も1970年生まれだから、同年代の建物の気持ちは分かる。民間だけに任せていても思うようにことは進まない。ここは行政が表立って先導し、官民一体となって取り組むことが条件となるが、これからは敷地売却制度が主流になるのではと考えている。立地の良い場所に限られてしまうことも考えられるが、今後に注視していきたい。
