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繁忙期

川本 善信

筆者 川本 善信

不動産キャリア20年

親切丁寧に対応します。

そろそろ来年の繁忙期を意識し始める時期に入った。今年はお客様が来店されても紹介できる部屋が殆ど無いという状況となり、残り一つを奪い合う椅子取りゲームを彷彿とさせた。家賃上昇率都内一位とされる押上が人気エリアに成長したことを実感したことを思い出す。2026年はこの経験を活かし、もっとスムーズにお部屋探しを行える環境を作りたい。お客様が希望条件に見合った物件を確実に獲得できる方法をまとめてみたいと思う。


これまでは借り手の需要が増えると共に、供給側の募集物件も増加するのだが、今年は何やら様子が違った。募集物件の数が需要に全く追い付いて帯こない。理由はいくつか考えられるのだが、最近の家賃の高騰により、引っ越しせずに更新を選択する人が増えたことが最大の要因だろう。数年前に借りた時の家賃帯では、同じクオリティの物件を借りることは先ず出来ない。


賃貸業界では毎年1月から3月が繁忙期とされ、お客様が殺到する。4月からの進学、就職、転勤などの理由で部屋探しの需要がMAXに到達する。この時期は貸主も強気になるため、家賃や礼金を上げたり、フリーレントが無くしたりと募集条件が厳しくなる。偶に相場より安い物件の募集が開始されようものなら、我先にと仲介業者同士の争奪戦が勃発する。物価高は変わらず続いているし、来年は更に賃料が値上がりするのではないかと、現場の仲介業者は予測している。


繁忙期には内見から戻って申込もうとすると、既に他社から申込みが入っているというケースも多々あるその為、ゆとりをもって部屋を探したい人は繁忙期を避け、引越し代もまだ安い12月に前倒しするのが最近の傾向となっている。1~2月に入ってしまうと、ネットで見て事前に空室を確認して来店しても、物件がまだ残っていることは稀である。不動産会社の店内でリアルタイムの情報の中から条件に見合った物件を選ぶ以外に手段は無い。


ここからは如何にして争奪戦を勝ち残り、理想の物件に辿り着けるのか、戦略をアドバイスしよう。先ずは初めに信頼できる仲介業者の担当を見つけること。やはり社歴が長く、賃貸仲介実績が豊富な会社が良い。ホームページやGoogleの口コミを参考に2~3件選び、実際に行ってみることをお勧めする。数時間の接客の中で、様々な質問や疑問をぶつけてみれば、その反応で善し悪しが分かるはず。


担当が決まったらLINEやメールで緻密に連絡を取り合うこと。物件情報を送っても何の反応も無ければ、担当もやる気を失ってしまう。気に入らない理由もしっかり伝えることで、何を望んでいるのか理解させれば、希望条件に近い情報を得られる可能性が高まる。そして相場よりも安い物件を契約したいのであれば、先行契約を選択する以外に道はない。それ以外は運任せになってしまう。


繁忙期には想像以上の数の人が部屋探しに四苦八苦する。まだ入居中の物件情報も当然ながら掲載される。その物件を内見せずに申込み、契約までしてしまうのが先行契約だ。確かにリスクはあるが、築浅の物件なら然程心配する必要はないと思っている。外観は実際に出向いて見て回り、室内は未入居時の写真を見て判断する。退去後は管理会社が原状回復工事をしてから引渡すのだから綺麗に修繕されている。管理会社も後にトラブルとなるようなことはしたくないから、問題ある物件を先行契約はしないはず。築古だと配管やサッシの状態、床の段差や梁の出っ張り具合等、自身の目で確認しなければ安心できない部分は確かにある。


もう一つ先行申込みというのもある。こちらは内見前に入居審査を進めておき、退去後に物件を見てから契約するかキャンセルするか決められる制度だ。大手管理会社にこの制度を導入しているところが多い為、賃料は平均的に割高となる。実家や寮住まいでいくらでも引越しを後伸ばしできる方には向いているが、退去日が確定している方には後がなくなる。再度探し直しても良い物件が見つからずに、気に入らない物件で妥協するしかないケースも実際にある。


三つ目はこれまで通りに来店し、2~3件物件を見て回り、店舗に戻って申込みを入れ、審査通過後に契約となる形式だ。一般的に賃貸物件は1~2か月前に退去申請を行う。管理会社は申請が出されると入居中でもすぐに募集を開始する。要するに内見できる物件というのは1~2ヶ月申込みが入らなかったということになる。理由は相場より高いか、間取りが悪いか、立地が悪いということになる。このような物件でも、最終的には決まっているのが繁忙期と言われる所以である。


このシーズン時は、10分前に出た新着情報にも申込みが入ってしまう。空室の物件情報を担当から受け取り、内見のスケジュールを組むわけだが、大半の人が直ぐには動けない。3日後、一週間後と間が開いてしまうと、良い物件は他の誰かに奪われてしまう。この業界もIT化の波が押し寄せ、来店しなくても申込みフォームをメールで送れば簡単にWEB上で申込みが可能となった。先行契約か先行申込なら、新着情報をもらって10分以内に申込みが可能という訳だ。先に契約出来る権利を得てしまう方が無駄がない。


年越しまであと二カ月と迫った。日々忙しく、休みも禄に取れない四半期。いろいろ話してきたが、やはり親身になってくれる経験豊富な担当を見つけることが一番の良策ではないか。満足する物件で暮らすことができたお客さんが、また別のお客さんを紹介してくれる。この連鎖だけで、ポータルサイトに広告掲載する必要はないのではないかと、最近つくづく思う。変わらず同じ物件が何十社から掲載されているし、既に申込みが入っている物件が大半なのだから。